No.35

樹乃かに展

No.34

FUJISAN展

2012 企画  No.34〜No.44

FUJISAN 展 「今年の富士はちがって見える?」

2012.1.8~1.29

「富士山といってもこんなに多彩な表現があるんですね!」「それぞれが小品ですが、どの作品も質が高く粒ぞろいですね。」大変ありがたく、面映ゆいお言葉ですが、来場されたお客さまから異口同音にいただいた感想でした。

当ギャラリーの新春グループ展は今年で2回目を迎えました。昨年は40名の作家による、干支の兎をモチーフにした「絵兎展」でしたが、今年は「今年の富士はちがって見える?」と銘打った「富士山展」でした。作家数もパワーアップし、47名。昨年と同じく油絵、日本画、版画、イラスト、絵本、マンガ、写真、陶芸、立体など様々なジャンルの作品が当ギャラリーのけして広くない会場にところ狭しと並びました。

昨年の「絵兎展」はどちらかというと明るく楽しい作品が多かったようですが、今年は昨年の東日本大震災のことも反映してか、やや静かで内省的な印象を受ける作品も見受けられました。

(もちろん中には干支の辰と富士山を組み合わせたお正月らしい作品もありましたが)

年明け早々ながら500名を超える多くの方々が来場され、終始にぎやかな雰囲気の会場でした。

また、同時期に開催した当ギャラリーが今年から企画をさせていただくことになった西荻窪の「ガレリア青猫」の新春セレクション展にも足を運んでくださるお客さまも多く、小品とは違った大作の魅力も堪能していただけたようです。

会期中は出品作家の在廊や来訪も多く、作品を間にお客さまと楽しそうにお話をされていたのも新春グループ展ならではの光景でした。

なお、会期中および会期後のパーティにおいて寄せられた東日本大震災への義援金は、日本赤十字に募金をいたしました。

ご協力ありがとうございました。

参加作家名

●油彩・アクリル・水彩

安藤 祐 上田 和彦 木藤 恭二郎 澤田 重人 雫石 知之 鈴木比呂志 舘 寿弥 タカハシ タツロウ 

乗松 直子 福本 健一郎 

益永 梢子 水口 和紀 向笠 靖子 

村上 亜紀子

●日本画

青柳 明日香 船山 佳苗

●版画

奥 勝實 風早 小雪 

コルネーリア 城野 由美子 

田中 恵美 長野 順 山ぶき・のり

●イラスト

相川 徹也 おぼ まこと 

櫻井 志恵 城谷 俊也 鈴木 美波 森田 MiW 山川 正芳

●その他画材

樹乃 かに 高島 進 吉田 祐子 若松 武史 

●マンガ

河口 仁

●写真

上村 尚子 加藤 智津子 

小木曽 亮一

●立体

内田 有 可児 久子 極楽堂 

牧野 光代 松井 鮎子 

ヤマダ・マサミ

●陶芸

松田 路子 安田 充岐 渡井 眞季

No.36

森田MiW展

Phantasmon 樹乃かにの「幻創動物たち」 展

2012.3.17~4.1

No.37

木藤恭二郎展

森田 MiW 個人展「春のような処」

2012.4.7~4.22

No.38

城野由美子

風早小雪展

木藤 恭二郎展「時間の休日」

2012.5.12~5.27

No.39

益永梢子展

城野 由美子+風早 小雪 銅版画展

2012.6.9~6.24

No.40

on the border展

益永 梢子展 Symphony-響き合う絵画ー

2012.7.7~7.22

益永 梢子展on the border「境界線上のリアル」展 

2012.9.8~9.23

No.41

樹乃かに展

樹乃かにイラスト展「ねこのここんとこ」 

2012.9.29~10.14

No.42

加藤智津子展

加藤智津子写真展

MAURITANIA サハラの色とかたち」 

2012.10.20~11.4

No.43

極楽堂展

極楽堂個展「極楽鳥獣園」 

2012.11.17~11.2

No.44

カラフルな

プレゼント展

カラフルなプレゼントー10人の女性アーティストのクリスマスアート展

2012.12.8~12.23

Overview Tophttp://ftf2000.com/gallery/Gallery_Face_to_Face_gyarari_feisu_to%7Eu_feisu/Overview.html

いつもは当ギャラリーでねこの絵の展示が多い、イラストレーター樹乃 かに(じゅの かに)さんのPhantasmon「幻創動物たち」展を開催しました。

Phantasmon(ファンタズモン)とはファンタスティック・モンスターの略。

どこにもいなさそうで、どこかにいると楽しい幻想の動物たちをテーマに約20点の作品を発表しました。

作品は「どうぶつ達と冬の月」と題したストーリー性を感じる作品と、「タンタティブ・シリーズ=創造の神様への新種の動物の提案」という趣の不思議などうぶつ達の絵のグループ。

加えていつもの「ねこってさ」のねこの絵の新作も一部発表しました。樹乃さんはこのPhantasmonシリーズは今後増やしていく計画で、ゆくゆくは不思議な動物達の博物図鑑のような形で発表したいとの事でした。きっと変(?)な動物のオンパレード。その時が待たれますね。

樹乃さんの作品は手描きとデジタルを併用したユニークな方法で描かれていますが、今回のPhantasmon達では

その豊かなテクスチャ感や色彩がふだんのねこ達とはまたちょっと違って見えたようです。

お客さまはユーモラスな動物達の形や表情とあわせてその違いも楽しんでいらっしゃいました。

浅い水の中に佇み、大きな花に寄り添う身ごもった女性。小舟に乗って舳先の示す方角を見ている狼と少女。上空を見上げ飛ぶ練習をしている黒い熊と裸の女性。

森田MiWさんの個展会場で出会う作品の中の登場人物や動物たちは、何かを待っていたり何処かを目指しているようです。ただ、その表情はとても淡々としていて、急いたり焦ったりした様子は見られません。

作品は生成りのバフン紙の上に水性色鉛筆と鉛筆を主体に描かれていて、展覧会タイトル「春のような処」の名の通り、淡い美しい色調と丸みを帯びた形の中で人物や動物や花々は「ここち良い柔らかさと充足感」に包まれてます。

今のありようを受け入れる幸福感と、それと同時に何かを望もうとする期待感。

会場に漂う静かな空気はその「自然であること」の精神性と同時に、ある「瞑想性」を見る人に感じさせたようです。

一見女性的なやさしさを持った作風でありながら、多くの男性客からそのような感想を聞けたのが印象的でした。

ふだんはイラストレーターとして活動されている森田MiWさんですが、今回は個展のためのすべて描き下ろし作品で、会期中ずっと在廊してくださった彼女の話とも相まって、より作家の思い描く世界が皆さまに伝わったのではないかと思います。

昨年11月に当ギャラリーで高島進さんと二人展「時を刻む線ー現れる面」を開催した木藤恭二郎さんの個展でした。前回は抽象性の高いモチーフが主でしたが、今回は抽象の中にもユーモラスな図像が表れたり、果実や植物などが描かれており、作家の新しい一面が見えた展覧会でした。パネルに白いジェッソを塗り、黒鉛を手で直接画面に擦り込むモノクロームの作品が中心だった前回に比べ、砥の粉や油絵の具を使った今回の作品にはより独特の温もりと手触り感が感じられ、多くのお客さまの心をとらえていました。

いずれの木藤作品にも共通して言えるのは、その背景に流れるたおやかな時間でしょう。あたかも古い陶器の表面のような肌合いと色彩や、深く浅く彫られた線を見ていると、その作品は昨日今日出来たのではなく、長い間土中に眠っていて熟成していたのではないかという錯覚を覚えます。

それは作家がいかに長い時間作品に向き合っていたかの証左でもありますが、個展タイトル「時間の休日」のとおり、 鑑賞者がゆったりとした時間を作品と共有できるのも魅力です。

具象と抽象のあわいから見えてくる静物の佇まいを何度もためすすがめつ ご覧になっているお客さまの姿が印象的な展覧会でした。

なお、木藤さんの大作を含めた作品5点が西荻窪の「ガレリア青猫」でご覧になれます。(当ホームページ内のNEWS!欄参照)特に白黒の50号の新作は必見です。是非、お運びください。

銅版画の女性作家の二人が、水をテーマに競作をしました。城野由美子さんは昨年5月に当ギャラリーで個展を開催したカラーエッチングの作家です。風早小雪さんは今年武蔵野美術大学院を卒業した新進の銅版画家で、メゾチントと写真を使ったフォトポリマーという技法で作品を作っています。一口に銅版画といっても色々な技法・手段がある事を知っていただく展示でした。その点では多色刷りで植物や小動物を描く城野さんと、フォトジェニックに水の表情をモノクロで表現する風早さんの作品の対象的な対比をお客さまは楽しんでいらっしゃったようです。

また、今回は一般的にはなかなか見る機会の少ない銅版画の原板も展示し、来場者の皆さんに触れていただきました。エッチングは腐食銅版画なので版に凹凸がありますし、メゾチントは表面を目立ててあるのでザラザラしています。直接作家の手業に触れる事によってより作品に親近感を抱いていただけたようです。

今年9月にベルギーへ版画の勉強のために留学する風早さんの作品は西荻窪のガレリア青猫で大作がご覧になれます。

是非、ご高覧ください。

昨年11 月の二人展では古い書物を解体し、新しいオブジェとして再生させた作品を展示した益永さんですが、今回の個展では全く印象の違うキャンバスを「折る」絵画を発表しました。

キャンバスを「折る」ことで生じた立体感は、絵画が平面であると同時に、物質感を持った立体的作品でもある事を私たちに気付かせてくれます。

また表裏に描かれた図像は、「折る」こと「重ねる」ことで互いに響き合い、新たな共鳴するイメージが立体的な広がりの中に現れます。

彼女の作品はこの両義性を持ちながらも独特の色彩感とフォルムですぐれて絵画的な世界を見せてくれます。会場内に折られ、曲げられて配置された個個の作品は展覧会タイトル「シンフォニー」の名の通り、美しい空間的なハーモニーを見せてくれました。

このように絵画表現に対する新しいアイデアを提案しながら、益永さんの作品は、見て楽しく分かりやすいのも魅力です。

モダンなクラフトやテキスタイル作品などにも見える遊び心あふれる色や形が多くの来場者の方々の心に残ったようです。

それは新しい料理を考えたり、手作りのバッグを作ったりするような軽やかな感覚を益永さんの作品づくりから感じるのと同じ事なのかもしれません。

鋳造ガラスの技法で溶けないアイスキャンディを作り、時間をテーマにした作品を発表する内田さん。古書の全ページを解体し、それを材料として本から読み取ったイメージを立体作品として視覚化する益永さん。実在する建物や動植物を撮影し、それをコラージュし、異界のジオラマを写真構成する尾崎さん。

この三人に共通するのは、ふだん私たちが当たり前だと思っている現実に対する認識に、ちょっとしたズラシの感覚を与えてくれる事でしょう。アイスは溶けるもの、本は読むもの、写真は真実を写すもの。その認識に彼らの作品は「?」を投げかけて来ます。私たちは生活の中で、さまざまな《もの》や《こと》に意味を与えながら暮らしています。しかし、見方をいったん変えてそれを眺めてみると、全くそこには違った意味が現れる事は良く経験する事です。

彼らの作品は、そんな「意味の境界線上にあるリアリティ」がテーマだと言えます。

作家たち独自の《もの》や《こと》に向ける視線は、それに逆サイドから光を当ててくれ、私たちに新鮮なリアリティを感じさせてくれます。

彼らの作品の前に立つ時、直截な分かりやすさを感じて面白く思うと同時に、何かとても心良い刺激を受けた感じがするのは、それが理由かもしれません。

当ギャラリーではおなじみの動物イラストレーター、樹乃かにさんの個展でした。

今回は、「吉祥寺ねこ祭り2012」に参加しました。吉祥寺内の約10の店舗やギャラリーが参加するイベントです。今年が第3回目で、年々盛り上がって来ています。

さて、樹乃さんの個展のテーマは「ねこのここんとこ」。

耳や鼻、しっぽなど、ねこ好きだけが知っている、ねこのあんなとこやこんなとこ。笑えるツボがいっぱいの楽しい新作約25点が会場に並びました。

いつもの事ですが、クスクス笑う声や、ねこ談義が会場で交わされるなど、和やかな雰囲気の毎日でした。

また、手描きのねこの手ぬぐいやオリジナル缶バッジ、ポスターなどのグッズ類も充実させたので、樹乃かにさんのファンばかりではなく、ねこ祭りを見がてら立ち寄ってくださったお客さまも楽しんでくださったようです。

今回初めて「吉祥寺ねこ祭り」に参加しましたが、遠方からいらっしゃる方や、会期が終わってからも来廊される方など、ねこ好きの方々の熱心さには樹乃さんも大変驚いていました。

なお、売り上げの一部はむさしの地域猫の会に寄付させていただきました。

西アフリカのモーリタニアは、国土の3/4以上がサハラ砂漠の国です。この国とサハラ砂漠に魅せられ、写真家加藤智津子さんはこの地を十余年訪れています。著書「砂漠を旅する」にもあるように砂漠はさまざまな表情を持っています。今回の展覧会は、最近撮影された写真の中からサハラの色とかたちをテーマにしました。もちろん、砂漠の砂と岩の多彩な風景もありましたが、そこに暮らす人々の暮らしが垣間見える、独特な色彩に彩られた家々の窓、ドア、階段などの写真もありました。

デジタル全盛の写真の中で、フィルム特有の柔らかな色彩と階調の美しさが印象的な写真展でした。

現地ガイドを雇い、野宿をしながらの撮影行をされるバイタリティ溢れる加藤さんの砂漠の話も面白く、来場者の方々は、まず旅行者も滅多に行かないサハラでのエピソードに耳を傾けていらっしゃいました。

会場には砂漠の砂やストロマトライトという太古の藍藻類が化石化した石など、珍しい品々も置かれ、ギャラリー内はひと時、旅心を誘う非日常空間と化しました。

お客さまも多く、いつも賑わっていた毎日でしたが、その中でも身長2m近くの駐日モリータニア大使が来廊されたのは、加藤さんの交友関係の広さを物語る珍しい出来事でした。

極楽堂(小泉保明)さんは、動物をモチーフに立体作品を作る作家です。彼が「いきもの達」と呼ぶ金魚、兎、蛙、鶴、亀などは、私たちが暮らす日本文化の中で良く見かける動物達です。DMの作家自身の文章にもあるように、極楽堂さんは古来、死生観や宇宙観の象徴でありながら、庶民の生活の中にあって安泰や招福の願いも託された「いきもの達」を現代にユーモアを交えてよみがえらせたいと思っています。

ギャラリー内で、極楽のムードを漂わせながらお客さまを迎えてくれる「いきもの達」が、どこかで出会ったような懐かしさを感じさせてくれるのは、私たちがそのような作品を歴史の中で体験している事と、同じ生き物としての彼らとの親近感にあるのかもしれません。

極楽堂さんは以前は石粉粘土で作品を作っていましたが、今回の個展ではその作品に加えて2年ほど前から始めた木彫による作品も半数ほど展示しました。

欄間彫刻などに見られる透かし彫りも使ったレリーフは、短い時間で修得したとは思えないほどの精緻さで、「いきもの達」の表情ばかりではなく、水の流れや蓮の花や葉の美しさなどは目を奪うほどです。また、桂の木の木目を残した落ち着いた色調の彩色も魅力です。

小さな世界に表された「いきもの達」の至福の園は、年齢を問わず来場の方々の心を捕らえていました。

「カラフルなプレゼント」をテーマに若手からベテランまで、10人の女性アーティスト達の競作展でした。油絵、日本画、水彩、版画、イラスト、ガラス作品など、ジャンルも多彩でした。

時期もちょうど12月のプレゼントシーズン。小さなものでは、樹乃かにさんの缶バッジや鈴木美波さんの陶器製のストラップや立体組み木、木村有希さんのハガキサイズほどの銅版画の額絵、

使えるものでは豊澤美紗さんのキャストガラスの花器など、贈り物にも最適なカラフルな作品が会場を訪れるお客さまの目を楽しませました。

また、今回の展示は2会場同時開催だったのもいつもとは違う趣向でした。もう一会場は、同じ吉祥寺内にあるコピスというショッピングビル5Fのアートギャラリーでの展示でした。この会場での展示期間は、12月一ヶ月間と長く、当ギャラリーで展示した作家さんたちの別作品がご覧になれました。両会場を行き来してくださったお客さまも多かったようです。

この会場での展示は、このアートギャラリーを企画・運営されているメトロデザインさんとの共同企画展でした。今後も外の会場と、Gallery Face to Faceの双方を使った立体的な展示も企画して行きたいと思っています。